ドーナツに会えない

2016年5月14日 晴れ ドーナツ日和

駅前のmisterdonutが来週で閉店すると渡部さんから聞いたとき、わたしは耳を疑い、それから渡部さんを疑った。「嘘でしょ?」だってこの街の駅前にはStarbucksもMcDonald'sもない、更にいうならconveniencestoreすらないからsevencafeもない、このうえmisterdonutまでなくなれば、いったい次の電車が来るまでの59分間をどこで過ごせばいいというのか。そういえば先日駅前を通ったとき、尋常じゃない数の男子小学生がmisterdonutに集まってきており、その一部は案の定入り口から溢れているところに女子大生のグループが加わり、もはや慢性的に行われている100円セールにこんなに人が集まるもんかなァ、なんて暢気にスルーしたわたしのばか。事はこんなにも深刻だった。
駅前のmisterdonutはわたしが駅前を駅前と認識した頃にはすでにあったと記憶している。わたしはドーナツという食べ物があんまり得意じゃなくて、そんなに熱心には通わなかったから、ポイントを集めて景品と交換したことはない、可愛いとは思っていたのだけど。それに飲茶を振る舞うのも意味不明だった。どうしてドーナツ屋の店内でラーメンを啜れようか。甘いものを食べたらしょっぱいもの、しょっぱいものを食べたら甘いもの、しょっぱいもの、甘いもの、しょっぱいもの、甘いもの…それがドーナツ食べに来る客の要求なのか。けれども残念なことに、misterdonutの椅子とテーブルは、ドーナツとラーメンを並べるには狭すぎる。
misterdonutは不思議なドーナツ、半年に一度無性に食べたくなるときがくる。3つくらい買って八合目まで行って車で食べたこともある。3つはさすがに買いすぎだ、ひとつを食べ終わる前にそうやって後悔することもある。もう半年は食べなくていいや、そんなわたしを変えてくれたのはたったひとつのドーナツだった。オールドファッションハニー、それはシンプルで飽きのこないオールドファッションを優しい甘さのハニーでコーティングしたオールドファッションハニーだった。そういえばオールドファッションハニーからハニーのニュアンスを感じたこと、ないな。娘を寝かしつけたあとにこのオールドファッションハニーと更にあまーいカフェオレで一杯やるのが唯一の楽しみ、なんて日々が続いたこともあった。その分を夫に買いだめしてもらったこともあった。余った分は冷蔵庫に入れといて、翌日や翌々日はトースターで温めると信じられないくらい口溶けがよくなる、という発見もした。こんなに愛したオールドファッションハニーなのに、隣町のジャスコに入っているmisterdonutでは扱っていない。だからわたしは再来週から、オールドファッションハニー難民にならねばならない。

晴れ

2016年5月3日 晴れ

二転三転した天気予報も22℃の快晴降水確率ゼロパーセントに落ち着いて、われわれは公約通り動物園に行く。動物園に行く服がなかったから先週ユニクロに行って白いパンツを買ってきた。白いパンツをはくためのパンツがなかったから昨日下着屋で白いパンツを買ってきた。
耕したばかりの土から立ちのぼる湯気はふもとの町を靄だらけにして、そのなかをわれわれの車は進んでゆく。


今週のお題ゴールデンウィーク2016」

タイトル ビラビラ

「来たれ 初心者!!!」

 

知識や技術は二の次で

ほんとうに必要なのは

健全な肉体と 音楽を楽しむ心です

(とはいえ 経験者大歓迎です ^^♪)

 

そんなカラダもココロも 持ち合わせてねえよという そこのアナタ 

大丈夫です 私たちと一緒に作り上げていきましょう

だって私たち まだまだ成長期☆

 

「一度きりの高校生活 一緒に吹奏楽しませんか…?」

 

第二音楽室で、放課後毎日練習中!ぜひ見学に来てください☆☆

 

 

2016年4月24日 晴れ 花粉症到来の予感

職場の先輩のイケメンの息子は今年中学一年生、さぞやイケメンの部活に入るのかと思いきや、吹奏楽に興味があるというので、中学高校と吹奏楽をしていたわたしはちょっとうれしかった。吹奏楽がイケメンとかそうじゃないとかそういう問題ではない、ただわたしが思春期だったころに吹奏楽をする男子は稀だった、今はどうだろう。音楽をする男子はかっこいいとわたしは生まれた時から思っているけれど。

しかし部活かあ、小学校の時にスポーツや習い事をしていたのでなければ、中学校の部活というのはたいていの人が初心者で、どの部活を選ぶか、それはとても自由な選択に思える。もっとその自由を満喫すればよかった。今だったら散々いろいろな部活に見学に行く。運動音痴も不器用さもセンスのなさも初心者だからと言い訳して、やっぱこれ自分には合わないみたいです、挙句、吹奏楽部に入部する。そして散々いろいろな楽器を試した挙句、トランペットを選んだりしてみたい。晴れた日は近くの公園で練習する。

中学の部活ではビラを配る自由はなかったけど、高校の部活はもう少し激しく勧誘してもよかった。だからそこで配るビラを妄想してみました。ビラを刷る前に同期の吹奏楽部員(フルート)に見せたところ今どきの高校生はもっとまともな文章をつくる、といわれたので、お蔵入りになったということで。

いもうと

2016年4月20日 晴れ 散ってる桜

今日は主人が接待で帰りが遅いんですの、と実家で話していたらいもうとがやってきて、うちも今夜は主人がおりませんの、まあおほほ、それでいもうとを我が家に勧誘して、夕飯を作ってもらって一緒に食べた。今から寝室に布団を敷いて洗濯物を回収して畳んで仕舞ってネコの運動して明日の娘の荷物を準備して、娘を風呂に入れて、それで一時間くらいだけどそれまでになんか作れる?なんでもいいんだけど、できれば冷蔵庫にある蕎麦を使ってほしいそれ昨日のやつだから、と指示を出している間にキッチンの細々したもの(おもに朝食を食べて下げっぱなしだった食器など)を片付けており、娘を風呂に入れる前の時点でほぼ完成していたので畏れおののいた。ねーちゃんちのキッチンは広くていいね新しくていいねとひとしきりおっしゃっていたが、それは単純にモノが少ないからです。いもうとはアパート暮らしのくせにわたしより調理器具が充実している。風呂から上がるとテキパキと配膳を始めるタイミングの良さも抜かりなかった。

汁蕎麦、汁物代わりなのでつゆは薄め、ワカメとえのき入り。

おひたし、にんじん、死にかけだった小松菜、えのき、もやし、を天つゆで和える。

レタス、トマトにはおかかしょうゆを薄くまぶす、鳥ムネ肉は表面をニンニクオイルで焼いた後にラー油を垂らしたマヨネーズを塗りこみトースターで焼く、スライスして火を通した玉ねぎを添えて。

あと白米。そんな感じで一人当たり四皿も並べて、大層なごちそうだった。死にかけの小松菜と昨日の蕎麦を見事に生かしてくれて本当にありがとう。えのきは実に程よく他の食材に紛れ込んでいて存在意義を疑ったが、少しでも多くの食品を食べられるようにとの配慮だった。まるで意識が違う。配膳の時点で使用した調理器具も片付いていて、後片付けも非常に楽だった。おしまい。

9ミリメートル

2016年4月10日 晴れ 公園の桜はピンク

耳の上に9ミリメートルのデルタをこしらえました。
先日の飲み会でちょっと理不尽な説教に巻き込まれた。職場で理不尽な目に遭うなんて不毛すぎると思っていたのでできるだけ回避しながら過ごしてきたつもりだけど、やはり理不尽は理不尽らしく予期せぬ方向からやってきた。帰り道に音楽を聴きながらまあしょうがねえかという方向に無理矢理もっていって、ああ自分には好きな音楽があってよかったなあとちょっぴり救われた。
それで昨日に美容室に行って、剃り落としてやった。わたしは女の子だったから、頭部にバリカンをあてたことはいまだかつてなかった。「初めてなら9ミリからいってみようか」バリカンは耳元頭蓋骨にブインブイン響きながら、あっという間に9ミリメートルのデルタを作り上げていった。大丈夫大丈夫横髪を耳にかけなければ、誰にも気づかれることはない。日常は耳元にこっそり手を遣って、9ミリメートルの精神を想うことができる。
正直いうとこれがあと1ミリメートルでも長くなって他の髪に紛れてしまうのが心配で、それならいっそ6ミリメートルでお願いすればよかったと思う。「ツーブロックにする子はみんなそう言うんだよ」と美容室のお兄さんは言う。「どんどん短くしていって、最後にはアタッチメントなしになる。範囲も広くなっていくんだよ、最終的にはモヒカンになる。でもそこまでは望んでないよね?」そこまでは望んでいない、今のところは。「ちなみに4ミリより短くすると、地肌で青く見えるようになるよ」次の夏にはそれもいいかな、とすこし思った。

この記事は段ボール箱の上で書かれています

2016年3月28日 晴れ 春の陽気

日曜日は晴れ、春の陽気、すこし遠出しようと思いつつ気がついたら高速道路に乗って山の向こう、サービスエリアの食堂でカレーを食べていた。せっかく山を越えたんだもの、すこし足を伸ばそうと思いつつ気がついたらジャスコでウインドウショッピングをしていた。それで気がついたらわたしはもはやショッピングが苦手だった。買いたいものがはっきり決まっていて探し彷徨うのは楽しいけれど、あてもなく店から店を渡り歩くのはもはやノーサンキューだった。極力お金を使いたくないのかもしれないし、お金を使うために時間を使いたくないのかもしれない。そんな人生は楽しいのか?そこで理想の週末の過ごし方を考えてみたところ、幸せとは晴れた日に掃除と洗濯をすることだった。そんな人生は楽しい!といっても掃除と洗濯は午前中のうちに終わるから、午後からは散歩に出たりドライブに出たり写真を撮りに出たり、そんな人生は楽しい!

ジャスコの楽器屋でアコースティックギター入門セットがすぐにでも買える値段で売られていて、それがわかっただけでもここまで来た甲斐があった。次のお天気には動物園に行くと思う。

1996年8月 20年前かよ

2016年3月19日 雨 ぬるい
明日はお義母さんがやってくる。だから家中を掃除した。いわゆる水回りをいつもの倍以上に磨いて磨いて磨き上げ、トイレなどは便器を素手で洗ったという大企業の新入社員の気持ちが分かるほど親身になって接した。風呂場は夫の担当で、排水溝やゴムパッキンに哀しくも群生したカビを退治せんとカビキラーを振りかけてしばらく放置、しているあいだにわたしは出入り口の溝に埃と水分が一緒くたにふやけている考えただけで気持ち悪いのに見て見ぬ振りをしてたやつをやっつけにかかる。どのようにやっつけたかといえば新婚時代の誕生日プレゼントとして夫が買ってきてくれたエプロン、これは薄くてくたっとしてなで肩のわたしには肩ひもが合わなくて、それでも毎日着けていたけど最近エプロンを新調したことにより全く使われずに風呂場のラックの一番下にしまってあったやつ、そのエプロンに断りを入れたうえではさみで細切れにし、水で濡らせばあっという間に使い捨ての雑巾の出来上がり、あとは割りばしを使えば細かいところに手が届き、手は汚さず、納得いくまで磨き上げることができた。途中でめまいがしたのはあまりに根詰めたせいか、はたまた目と鼻の先にあったカビキラーのせいか。
この作業の間なにを考えてたかというとわたしはどこでこのような掃除の技を身につけたか、それで思い出したのは、わたしがいわゆる思春期の頃に「風呂ではただ身体を洗うだけでなく、ゆっくりと湯船に浸かってマッサージをしたりストレッチをしたり雑誌や本を読んだり、そうして一日の疲れをとりましょう」という習慣に初めて触れ、それまでは30数えるだけだった湯船に雑誌を持ち込む!それがすごく女らしいことに思えて家にある雑誌を検分したけれどあるのは料理雑誌とばあさんの趣味の雑誌だけだった。当時の女子にはピチレモンとかセブンティーン、もしくは明星なんかを読む者もいたのだが残念ながらわたしはその流行には乗れず、また母親も雑誌を書って読むひとではなかったので、わたしが風呂場に持ち込んだのは「NHKおしゃれ工房」と「すてきな奥さん」だった。「NHKおしゃれ工房」がなぜ家にあったのか、それで思い出したのは、この8月号は夏休みの工作特集で、妹はそれを見ながらおじぎザウルスを作って学校に提出していた。わたしは毎年苦労して夏休みの宿題を作り上げてきたのに妹は雑誌に作り方が懇切丁寧に載っていて、それを見ながら簡単に宿題を終わらしてしまったずるい、と今でも思っているが、それで思い出したのは、この時期は母親の入院騒動があって宿題もろくに見てもらえなかったんだった、家族みんなが大変だったんだな。ただし風呂場で読みごたえがあったのはおじぎザウルスよりもドールハウスの作り方だった。
割りばし雑巾の使い方は「すてきな奥さん」に載っていた。