大学の寮の前を通った話

2015年3月26日 晴れ 風が強い

通っていた小学校の近くには、国立大学の寮があった。この建物はわたしが小学生の当時からおんぼろで、鬱蒼とした森に囲まれており、崩れかけた門柱があることでやっと、それが寮だとわかるくらいだった。森の木の多くにはなぜかロープが結びつけてあり、あるところは木の枝から垂れ下がっていて、考えたくもないことを想像してしまう雰囲気があった。地図で見るとそれほど広くない場所なのに、敷地沿いに歩いてみるとどこまでも森が続くようだった。周囲は西日が当たる場所だったにもかかわらず、常に薄暗かった。その寮の前を通るときはたいてい放課後だったので(友達の家の近くだった)、なるべく急ぎ足で通り過ぎるようにした。

今日、その寮の前を通ってみた。森の木はほとんどが伐採され、木に結びつけられたロープはなくなっていたし、日当たりがよく、なんだかさわやかな場所になっていた。そして、すごく狭く感じられた。ただ、当時のまま崩れかけた門柱と、なぜか伐採されなかった森の一部だけが不自然に残っていて、やっぱり、考えたくないことを少し想像してしまったのであった。