巻きます

2015年6月10日 晴れ 洗濯日和

夕方5時。ゼンマイを巻く時間だ。木製のそれをゆっくり回すと、カカカ、カカカとあたかも金属で作られたような音が響くが、使われているのは木だけである。このゼンマイはしばらく巻かれた状態を維持したのち、およそ5時間後に、巻くときの何倍もゆっくり時間をかけて、元に戻る。ジ、ジ、と金属音が聞こえるが、もちろん木の音である。
初めて気づいたとき、最初は虫が入り込んで鳴いているのかと思ったが、そうではなかった。これはゼンマイの音で、毎夕毎晩繰り返されるひとつのシステムである。思えばずっと初期の頃から、何か音がすると言われていた。気づいていなかったのはわたしだけだった。
気づいたからといってどうというわけではなく、わたしもわたし以外の生き物も、ゼンマイとともに生き続けてゆく。もちろんゼンマイがなくなったとしても、生き続けてゆく。そういうシステムである。