メタルのおっさん

2016年2月12日(日) くもり ずっと家にいたと思わせるようなくもりだった

拝啓 メタルのおっさん。おっさんは今年の仕事始めに顔を合わせたとき、「今年はメタル元年にしようね」といってにっこり笑った。わたしは、はい、ぜひ!と笑顔で返した、つもりだけどね、ほんとうは一昨年の暮れのころからわたしのメタル修行は始まっていたんだよ、メタル元年というならそれは去年のことだった。

一昨年の暮れにおっさんがくれた手書きのメモは職場に配達される新聞にはさまっていたなにかの広告の裏紙だった。元祖メタルともいえる4組のアーティストからおすすめのタイトルが一つずつ書かれていて、わたしはそれをにぎりしめて、職場から最も遠いゲオに向かった。おっさんのオススメにベストアルバムはなかった。そのころのわたしはテクノからプログレッシブに興味がうつったところで、メタルもその延長線のずっと遠いところに位置する程度とは思っていたから、まあちょっと聴いてみるのもいいもんかなくらいの気持ちでCDをレンタルして、一通り聴いたところで放置していたのだけれども、ある夏の日のドライブ、お気に入りのプレイリストも聴き飽きた、精神の高揚を求めたわたしは、アイアン・メイデンの『The Number Of The Beast』を流した。そして「Hallowed Be Thy Name」に辿りついたのだよ。

youtu.be

最初に聴いたときは演歌かと思ったけど、今でも結構そう思っている。すぐに口ずさめるギターメロディとかビブラートかけまくりのヴォーカルとか、とにかくきもちいい。これがメタルこれぞメタルと思ったものだった。気味の悪いジャケット、髪振り乱すマッチョのギタリスト、腕にはもれなく入れ墨が入っていて、観客はスキンヘッド。

それで次の日、わたしはおっさんに正直に申告した。「去年オススメされたCD、今更になってよくよく聴いてみたんですけどね、Hallowed Be Thy Name めっちゃいいですね」。

それからおっさんは、朝の掃除とお茶出しの合間にメタルの話をしてくれるようになった。時にはバンドメンバーの変遷の話、時にはライブの話、夏には夏フェスの話、秋には Hardwired の話。おっさんは Hardwired の発売を心待ちにしていたから、 Hardwired について訊くのが礼儀だと思った。「Hardwired どうでしたか?」「よかったよ、プログレっぽくて」「へえ、プログレには興味あるのでわたしも聴いてみよう」それで現在までまだCDすら手に取っていないわたしですが、冬になったときおっさんは大量のCDを貸してくれた。ドリームシアターメタリカ。それを一生懸命パソコンに入れながら、今このブログを書いています。(いい加減明日返そう) 敬具