あの角の本屋の桜まで満開だったら、泣いちまおうかと思ったのでした

2016年4月23日(日)晴れ 晴れているけど寒かった。先週のほうが暖かかった、絶対。

夫は家族のだれよりも早く体調を崩し、自分よりも体調の悪い者がいようものなら「おれも喉いたいかも…」といいながらいちはやく体温計を取り出し、測ると実際に38度近くの熱があるからたちが悪い。結婚式のときに「病めるときも健やかなるときも…」とかなんとか誓いを立てて、そのときはそんなおおげさなと思っていたけど、病めるときというのがこうも多いとあの誓いもまあ必要かなという気がする。核家族の子育て世帯だから、単純に人手が足りなくなるのがきつい。あと彼は体調を崩すとあからさまに病人オーラを出すので、こちらの気分も滅入ってしまう。会社を休んで一日寝てたおかげで治ったよ、とはいかないらしい。ところで我々の結婚式は神前式だったから、「病めるときも健やかなるときも?」と牧師が問うてきたわけではなかった。けれども「誓いの詞」というのを二人で一緒に読みあげ、そのときにどこも似たようなことかいてあるんだなと思った記憶があるから、まあ似たようなことで誓いを立てたんだろう、だから末永く愛します。

 

先週の日曜は休日出勤の体力勝負で疲労困憊だったのだった。「花見日和の日曜に大変なこと頼んですまんのう」とは客から口々に言われたものだが、いいんですのよ代休もらえますから、平日にゆっくり銭湯でも行きますわ、ホホホ、とかなんとかがんばった。それにほら、桜の見ごろも来週あたりでしょう?お花見は来週ゆっくりするからいいんですのよ。そしたら客どもは「公園地の桜なんて今日あたり満開だっぺ。このへんは田舎だから桜の咲くのが遅いけど、公園地の桜なんて明日の雨で全部散っちまうっぺ」と言うので泣きたくなった。ここ数日わたしが見てきた桜は全然咲いてなかったじゃないか。知らないところで満開になりやがって。

仕事が終わったころには指先から腕から腹から腰から足まで痛かった。車に乗ってもすぐには発車できずに、鼻をかんだりしてから自宅へ電話した。すると母が出て、あんた、子どもが熱出して大変よ、今から坐薬打つわよ、後ろでは我が子が大泣きする声が聞こえて、ああかわいそう、どうにか楽にしてやって、それでタカシ君は?と聞くと、タカシ君は38度の熱が出て休日診療に行ったらインフルエンザの疑いありと言われてそれからずっと別室で横になっているという。はあ、じゃあわたしはこれから帰宅したら風呂掃除して洗い物して夕飯の準備して子にご飯食べさせて(風呂に入れるかは様子見てから考えて)、そういうことひとりでしなきゃいけないのね?そう思いながら車を運転すれば、公園地の桜は確かに満開で、遠方から来たみたいな観光客、出店に並ぶ人たち、小さい子を連れた家族はもうすぐ帰るところで、部活終わりの高校生は今から夜までブラブラ楽しむかみたいな、そういう毎年の花見の風景が確かにあって、これはもう、もう、あの角までは我慢して、あの角の本屋の桜まで満開だったら、泣いちまおうかと思ったのでした。

はたして角の本屋は満開の樹を一本抱えていて、ただしそれは、桜よりも真白なコブシだった。なんだ、よかった。子ぐまたちは、もしゃもしゃ、ぺちゃぺちゃ、花をたべます。そうして帰宅して二人の病人の面倒を見ながら、明日はわたしも会社休まなきゃならんなあと、思ったのだった(そこで代休を消化してしまったから、平日に銭湯に行く楽しみも奪われましたとさ)。