肘内障 vol.3

2017年11月18日(土)あめ つよめ

きょう娘と二人で出かけた。娘は初めて訪れた場所だったので始めこそ固まっていたけれど、慣れるとチョロチョロ動きたがった。わたしは屈んで娘の右手を握り、「遊びにくる前にお約束したよね?かかの言うこと聞いてね」とお伝えしたのだけど、そのときわたしの左手にはポキポキッという感覚があったのだった。直後に娘の「痛かったぁー」という叫びそして泣き声。右腕は、力なく下げられている。ああまたやっちまった。腕のなにかが外れた。ホントに癖になったんだな。しかしよく考えてみれば、今回は右腕だ。右腕をやらかしたのは初めてだ。
エレベーターに乗るまで泣いていたけど、ドアが閉まるとほかの乗客を慮ってか静かになった。右手の指をすこし、確かめるように動かしていたのをわたしは見逃さなかったので、よかった折れたんじゃないなと思った。けれど車に戻った途端「娘ちゃん痛かったぁー痛かったぁー痛かったぁー」と泣き出して、そうかぁ他人の前だから痛みを我慢していたのか、あんたも三回目だから痛みに慣れたもんだと思ってたけどそんなわけないよな、痛かったって過去形だけどこれたぶん現在進行形なんだろうな(まだそのへんの区別ついてないんだろうな)、などと思った。
この時点で11時30分で、わたしはまず夜間休日診療所について調べたが、土曜は夜7時からしか対応していないのだった。それから前回連れていった整形外科のことを想い、(前回は結局そこでは治らなかった)、けどもう選択肢がないから急いで電話をかけた。12時までに来たら診ますよ、と言ってくれたので急いで向かって、着いたのは11時55分だった。
病院でも大泣きしていたので、スタッフの方が先生にすぐに診てもらえるように手配してくれた、というか最後の客だった。前回のことを覚えていてくれたので、今回も同じであること、でも前回治ったのは翌日であること、あと今回は初めての右腕で…などということを、娘の泣き声に負けないように説明した。スタッフは電子カルテに書き込みながら、「前回は代理の先生だったんですけどねー…今日は院長がいますから!」と院長を召喚した。院長はサッと来てサッと治してくれた。迷いない口調で、ハイ治りましたと言った。たしかに治っていて、娘はまだ唸りながら、右手でわたしの肩を掴んだ。スタッフはじゃあこれ握ってみてと言って、娘にぬいぐるみを差し出した。(あ、ドキンちゃん…)。
「肘内障です。あのね、左腕がなりやすいってことは、右腕もそうだってことなんですよ。今度からは両方気をつけてね」肘内障すなわち腕の靭帯が外れても、いつかは勝手に治るんだそうです。けどそれまでは痛いから、すぐに治してあげるからまた来なさい、と言ってくださいました。ありがとうございます、ありがとうございます、と医療ドラマの母親役のように頭を下げて、診察室を後にした。