鱈を食べたら

2020年1月24日(金)雨

地元の漁港から週に二回ほど魚屋がやってくる。軽トラの荷台を保冷庫に改造して、その日水揚げされた魚を積んで実家の周辺地域をまわる。実家の玄関前には少しスペースがあって、魚屋はそこに車を停めると向こう三軒両隣に「おはようさーん」と声をかけて歩く。すると近所のババたちがゾロゾロ集まってきて、井戸端会議などしながら魚屋のすすめるものを買っていく。保冷庫は横の部分が作業台のようになっていて、魚屋は客が買った魚を食べやすように仕分けてから売ってくれる。天気が悪くてよい魚が水揚げされなかったときは、冷凍牛丼や冷凍エビフライなどを持ってくる。すると母親はそれを買っておいて、実家に顔を出したわたしにもたせてくれるのでありがたい(うまい)。

今日は魚屋が鱈を売りにきたので鱈汁にします、と連絡があって、実家に寄ると大鍋いっぱいの鱈汁が出来上がっていた。「うちだって二人暮らしになったのにこんなに鱈があってどうしましょ」と言いながら母は、小鍋たっぷりのおすそ分けを持たせてくれた。たぷんたぷんいわせながら帰った。「近所中が鱈を買ったのにみなキモの部分はいらないというからうちで全部もらった。だけどあたしも年であんまりコッテリしたもんは食べられないから、あんたんとこでもらっておくれ」そう言ってキモの部分をしこたま入れてくれたので、夫と二人でうまいうまい言いながら食べた。娘はあんまり好きじゃないみたいだった。わたしは小さい頃からキモが好きだったと思う。白子も好きだ。ほかに胃袋とかも入っていて、噛むといつまでも弾力があるので『ガム』と呼んでいた。「今日は胃袋ないみたいだった」と母は言った。白子もももちろんない。

今年は全然雪が降らないし寒くもないし、あまり鱈汁って気がしないなあ、と思っていたが、食べてみるとそうでもなかったことに気づいた。