「形見の万年筆」

2020年5月27日(水)晴れ のち 雷雨

最近は夕飯のあと万年筆を出してきて写経したり落書きしたりしている。

万年筆は触りたくなる時期が周期的にあって(心身のよゆうも関係するようだ)、こないだその周期到来の兆しを感じとったのでインクを買ってきた。

パイロット 万年筆インキ iroshizuku INK-50-SY ショウロ

今まではカートリッジのインクを使っておもに書き味を楽しんでいたけれど、好きな色のインクを買うということに憧れはあって、初めて買うならパイロットの「松露」だなと決めていたのでそうした。コンバーターも買った。

初めてインクを入れるなら。そう思ったわたしの手元には、一昨年亡くなったばあちゃんの形見の万年筆がある。「形見の万年筆」、すごく物語をかんじる響きだ。ばあちゃんは生前この万年筆を使い倒した。お年玉袋に「〇〇チヤンへ」と書いてあるの、たいていこの万年筆だったと思う。チの一画目と二画目が繋がって数字の「4」に近い。それとヤがでかい。女性らしいとは言えない、ばあちゃんのくせ字が好きだった。万年筆で目指すのはばあちゃんみたいな味のある字だというところもある。それで母が形見分けの話を持ち出すより前に、ばあちゃんの万年筆ちょうだいと言った。

「ばあちゃんの形見の万年筆」は使い込まれて塗装が剥げているところもあるが、よこしまなわたしはまず、これが名のあるブランド物ではないかというところから調べ始めた。キャップにPILOTとあるからPILOT製で(松露とおなじメーカーでよかった)、ペン先はゴールドで、「14k585」と刻印がある。これをグーグル検索するといくつか同じ万年筆がヒットして、結果、飛び抜けて名のあるブランド物ではないということが判明した。いいんだそんなことはわかってた。ところでヒットしたページを読んでいくとペン先の根元のほうにある刻印で製造年月がわかると書いてあって、手元の万年筆を目を細めて読み取ってみると「H185」だった。1985年1月に製造されたもの。おばーちゃん!わたしの誕生日は1984年12月だ!ばあちゃんは、(初孫である)わたしの誕生を記念してこの万年筆を買ったの?そうなの?いや偶然だとしても嬉しい。わたしの手元に残ってくれて良かった。大事にしようと思った。

ちなみに、購入したコンバーターCON70-N はこの万年筆には大きすぎて、ボディーが取り付けられなかったです。今はペン先にコンバーターだけ付けた間抜けな状態で使用している。はやく完全体にしてやりたい。