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お題「雪」

2016年1月27日 雨 この雨で道路の雪はすっかり融けた

右に左に上に下に、揺さぶられながら車を運転する。なぜって雪の塊が道路に横たわっているからで、うっかりスピードを出して突っ込むと車は小さくジャンプした。ラジオからは外国の日常会話が流れていて、イタリア人Aがおふくろの味を紹介していた。あたためたオリーブオイルでニンニクとスモークサーモンとバジルを炒めたものを、スパゲティに和える。午前11時のわたしは腹を減らしてそれを聴く。スモークサーモン。正直言ってスモークサーモン以外のレシピはほとんど頭に入ってこなかった。イタリア人は日常的にスモークサーモンが手に入る生活をしているのだろうか、鮭を釣り上げて自家製の燻製を作っているのだろうか。うらやましい。よく冷えた白ワインと一緒に食べたいと、イタリア人Bは言っていた。

門柱よりも高い雪の壁の向こうに対向車の影を確認しながら、おいしいスパゲティとその代償となるものについて考える。オリーブオイルでスモークサーモンを炒めるとき、きっとコンロの周りは油まみれになるだろう。茹でたてのスパゲティを絡めるとき、茹で汁は鍋の周りに飛び散るだろう。そしてなにより、スパゲティは出来上がった瞬間に食べ始めるべきだろう、使用した調理器具をほったらかしにして。その一連の流れを考え、残された台所の様子をイメージしたとき、このスパゲティを作るのはやめようと思った。

大雪が降ってからきれいに除雪された道路は、雪が積もる前よりも広く感じる。センターラインも路面標示もすべて白く埋もれて、視界が広がったように感じる。感じるだけで、実際の視界はそこかしこの雪の壁に遮られ、たまの晴れ間に乱反射する太陽光と雪の照り返しは目を眩ませる。そのうえきれいに除雪された道路は雪が踏み固められ、それはもう滑るすべる。わたしが緩やかな右カーブに差し掛かろうとしたとき、対向車が滑りながらこちらに向かってきた、それを避けようとブレーキを踏みハンドルを切ったわたしも滑りながら雪の壁に突っ込んでいった、結果2台とも無傷で互いを回避し、わたしは半回転して雪の壁にぶつかって停まり、対向車はその後大きく滑りながらも態勢を立て直して去っていった。一瞬の出来事だった。呆然としてしばらく動けなかった車内では外国の日常会話が流れていて、ドイツ人Aが音楽に並々ならぬ興味を持ち始めたこと、ドイツ人Bが音楽よりも今はスポーツに興味があること、などを話していた。

一昨日の話です。

 

お題「雪」