ゆきてかえりし

2016年3月5日 晴れ 晴れ 晴れ

先週は天気が悪かったので買い物くらいしかすることがなく、しまむらで娘のウインドブレーカーを買った。本当はアノラックがほしかった。友人は自分の娘のアノラックをシーズンの終わりに安く購入して2年くらい着回し、いや今年も着ていたから3年だったか、季節めぐるたびにいかに安く買ったかということを自慢していて、わたしも子供が生まれたらぜひそうしてやりたいと思っていたのだけど先週のしまむらではすでにめぼしいものは売れてしまっていて、いいさ来シーズンのはじめに買ってやろう、このくらいの出費がなんぼのもんじゃいと思いながら下唇を噛んだ。アノラックをアノラックと呼ぶとき、ベストをチョッキと言ってしまったときのような、ハイネックをタートルネックと言ってしまったときのような、スエットをトレーナーと言ってしまったときのような時代遅れのセンスを感じるのだけど、それ以外の呼び名をわたしは知らない。(あ、スノーウェア…)
しまむらのウインドブレーカーと西松屋のブーツ、これで準備は終わりだった。いつもなら抱っこで玄関まで来る娘は今日自分の足で歩き、いっちょまえに上がり框に腰掛けて大人しくブーツを履かされている。そして一歩を踏み出す。玄関のたたきは想像以上に硬く、安くてぶかぶかのブーツの中で娘の足がぐにゃぐにゃ動いているのがわかった。
玄関のドアを開けたとき、娘はいったいどんな顔をしていたんだろう?初めて歩き出す外の世界に、等身大の目線に、期待に胸を膨らませていたのだろうか?傘立てや灯油缶や猫ゲートやそういうものから娘の興味をそらすのに精一杯で、わたしは娘の顔をしっかりと観察することができなかった。それでもドアを一歩出た瞬間に見つけた寄せ植えの鉢の、もはや枯れかかったゴールドクレスト、去年の11月からなんとか生き延びてくれたやつ、を指さして声をあげたときには、これが彼女の目線なのだと非常に新鮮に感じた。
コンクリートは硬かった。砂利は歩き辛かった。坂道も歩き辛かった。土も歩き辛かった。それでも無事に、行って帰ってきた。