BCGの思い出(娘)

2015年5月20日 晴れのちくもり 午後から寒くなる

予防接種は地獄絵図だった。

病院に集まった6人の赤子とその母親は、狭い部屋の小さなモニターでBCGについてのDVDを見せられ、看護師の注意事項を聞いてから、注射に臨んだ。
時刻は午後2時、昼寝にまどろむ者もいる中、最初にワクチンを打たれし者の悲鳴が響き、待合室に緊張がはしる。昼寝していたやつも目を開き、不安そうにあたりを見回していた。悲鳴は止むことなくむしろ大きくなる一方で、先生の宥める声も意味を成さない。時間が長く感じられ、なかなか難航しているかと思われたそのとき、一同が注目する中を、泣き叫ぶ赤子をがんじがらめに抱いた母親と看護師が、カニさん歩きでやってきた。
BCG接種後はワクチンを自然乾燥させるべく、接種部位に触れないように赤子を抑える必要があるとのこと。我が娘も大泣きし、それを抱えてカニさん歩きで待合室へ戻ると、先に注射を済ませた男の子がまだ泣き止まない最中で、我が娘の泣き声でさらにヒートアップしたのだった。
泣きたい動きたい娘を押さえつけて乾燥待ちしていると、次の子が診察室で格闘している声が聞こえてくる。すると待合室にいる我々の子もつられて泣く。しばらくすると診察室から赤子が戻ってくる、当然大泣きしている。すると待合室もまた泣き声が大きくなる。といったふうに、寄せては返す波のように泣き声は満ち引きし、まるで地獄絵図だった。5分おきくらいに看護師が現れて、一人ひとりの接種部位を確認し、まだ乾いてませんねと涼しい顔で言いながら手にした団扇でなんとなく扇いで去っていった。
修羅場をどう乗り越えたかすでに忘れてしまったのだけど、気がついたら接種部位は乾いており、そこから帰り支度を済ませて帰宅するまではあっという間だった。帰宅後はご褒美に、アイスを食べて栗ぜんざいを食べたけれど、娘には乳を通して供給されただろう。病院で興奮したせいで、夜の寝付きは悪かった。